タグのついた投稿ウォールドローイング

始まりの終わり

モントリオールに来て最初のマスキングテープのウォールドローイングを全て剥がした。びりびりと、容赦なく。作るのと違って、剥がすのは一瞬だ。

作品を剥がしてしまうのは、全然悲しくもなければ寂しくもない。むしろ、見慣れた作品がすっと消えて、真っ白な壁に戻るのは、気持ちが良く、せいせいするくらいだ。多分、この作品にとっては企画→制作→鑑賞→撤去というこの一連の流れそのものが重要な気がする。産み出されたものは、いつか死ななければならない。

とにかく最初の一歩は踏み出した。さらに次に進むには、まずこの「始まり」を終わらす必要がある。ドロイーグを剥がすのは、次に進むための儀式なのだ。

4 comments 2009年7月8日

壁にドローイング

rue gauthier1フランシスコがベネズエラにいる間に家の白い壁にドローイングを作っておくように指令が出ていて、それがやっと完成した。

うちの壁は白く、リビングは結構広いので、ウォールドローイングにはかなり使える。

大阪以来のウォールドローイングだ。一人なので作り方も自然と変わる。最初は行き当たりばったりで、即興のドローイングという感じ。貼っては剥がし、貼っては剥がしの繰り返し。ルールを決めては変更し、少しずつ組み立ていく。

作業をしながら、やっぱり私はマスキングテープを貼る作業が好きなんだと分かった。作業としてはなんの変哲もなく(ただマスキングテープを壁にはっていくだけだから)、単調とも言える作業だ。でも、なぜか楽しい。楽しいというのが違うなら、やり出したら最後までやりきれずにおれないというか、はまる。自分でやっていて楽しいと思うから、他の人にもこの面白さを分かってもらいたいから、一緒にやろうと、と言えるのかもしれない。一人でやるのはもったいない。人に手伝ってもらうと、私自身は事前の準備が大変で、一人でやるのとは違う緊張を強いられる。でも、それがまたいい。

前回の展覧会を思い出すと、すごく素敵だったのが、作業をしている途中に、蛇谷さんの友達がギャラリーに遊びに来て、彼も作業に飛び入り参加してくれたことだ。何でもないことだったのかもしれないけれど、私の中では言葉にならない特別な感動として残っている。またいろんな人とワイワイ作業がしたいものだ。

今回のドローイングで、新しいテーマも見えてきた。かれこれ2年前にやっていた“額縁”というテーマについて今一度考えてみたい。ウォールドローイングは本質的に額縁を完全に否定したところにある。そして額縁を拒否することは、私の制作の土台にもなっている。だからこそ、今改めてウォールドローイングを使って額縁について考えるのは面白そうだという気がする。

2 comments 2009年6月6日

Yellow Project 準備の様子

Yellow Project

photo by Marta Papini

Add comment 2009年1月31日

おかげさまで

 おかげさまで展覧会無事始まった。オープニングには雨にも関わらずかなり沢山の人が来てくれて、いろんな人からいろんなお言葉をいただいた。本当に有り難い限りだ。
 手伝ってくれたニコ、ジュリア、エステバンには本当に感謝。そして展覧会を提案してくれたマルタとステファニアに感謝。そして見に来てくれたみんなに感謝。

 今回の作品は今までと全く趣向が違うので、中には戸惑った人もいたみたいだけど(実際「紙がない」という批判をされた)、私自身はこの新しい作品はやっぱり今までの作品の土台があってこと成立したものだと考えているので、あまりその点の批判は気にしていない。
 装飾なのか作品なのかという微妙なラインも、私自身では装飾ではないと言い切れるところまでもっていけたと思うし、基本的に見る人にもそこは感じてもらえたようだ。

 さらに、今回は展示場所、つまりレストランのあらゆる要素をちゃんと研究できたのが良かった。レストランだけど・・・というのではなくて、レストランだからこそできることを、ちゃんとやることができた。これはとても良い経験になったと思う。これからも機会があれば特殊な場所での制作はぜひやってみたい。

 勿論、自分の中では誰にも指摘はされなかったけれど、問題点として考えているところも沢山ある。もう少し続けて深めていけば、もっといろんな面白いことができるかもしれないという気もする。卒論の鬱憤が溜まっていただけに、この作品の制作は本当にスカっとした。

2 comments 2009年1月27日

ナポリ

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思ったよりも今回は大変だった。丸4日半ばっちり肉体労働をしてきた。最初の4日は本当に朝から晩までだった。基本的には肉体労働でも、常にかなり細かい神経を使う作業なので、毎日仕事が終わるとくたくたで、歩くのもやっとというくらいだ。
またギャラリーでのドローイングかと思いきや、アルフォンソ・アルティアコはただの仲介役で、仕事は個人邸の壁のドローイングだった。2人で縦4m×横5m近くのドローイングを仕上げるのはなかなか大変だった。いろんな手違いや、段取り不足、予定外の展開などありつつも、ピーターと2人で無事乗り越え、作品を仕上げてきた。今回もかなり面白い経験ができた。

ナポリの隠れた一面を見れたのも良かった。ナポリの街の外見は、どこも汚くてごちゃごちゃしている。今回仕事をした家も、薄汚くてどんよりと暗いいかにも危なそうな通りにあった。最初に家の中に一歩入るまでは、本当にこんな所で働くのかと疑ってしまったくらいだ。

でも一歩家に入って驚いた。全くの別世界。天井が高く広々とした部屋、アンティークな家具、金箔で縁取り装飾されたドアや壁(よく近くで見ると実際に一枚一枚金箔が貼られているのが分かった)、そしてクラッシックな絵画と彫刻。明るい光が広い部屋一杯に入り、ベランダに出ると、下にはジャングルのように青々と茂った庭が見え、その陰にプールが青く光り、遠くには地中海が見えて、時たま大きなフェリーが見えた。家の前の通りのナポリの喧騒からは想像もつかないような豪華で同時に落ち着いた空間だった。

これは多分イタリアとフランスの大きな違いだと思う。例えばパリでは街を歩いていて外から見て大体中の様子が想像できる。例えばアヴェニュー・ヴィクトル・ユゴーやアヴェニュー・フォッシュ、トロカデロとかの辺りの家がどこもすごく豪華なのは外から見れば分かる。あの辺りの坂をチャリで上るたびに、「すごいなぁ」と中の様子を伺ったものだ。
一方イタリアではそれが外からでは全然分からない。ミラノやナポリといった大きな都市では、建築的にも平凡で壁も排気ガスで汚れきった建物の中に、ゴージャスな別世界が広がっているというのはよくあることだ。

今回の依頼の家のオーナーはとても感じの良い中年のゲイのカップルで、何かと私たちによくしてくれた。また家にはクマールという執事がいて、彼はスリランカ人だけど英語もイタリア語も完璧で、彼の気遣いのおかげで私たちは本当に気持ちよく仕事ができた。むしろ彼に甘やかされていたと言っていい。これまで沢山のお手伝いさんを見たけれど、クマールほど完璧で優秀な執事は見たことがない。疲れてきたらジェラートを持ってきてくれたり、コーヒーを入れてくれたり、小まめに世話をやいてくれた。また昼ご飯はいつも彼が作ってくれていたのだけれど、料理の上手いこと!なんだかんだで私たちはすっかり仲良くなった。

また、今回はピーターと2人きりだったので、仕事も気持ちよくできた上に、夜は食事やパーティーに呼ばれることもなく、ゆっくりできたのが良かった。毎晩仕事後にビールを飲みながら、ご飯を食べながら、いろんな話を聞いた。
オノ・ヨーコとジョン・レノンが出会ったギャラリーのオーナーの逸話、私の憧れているあるアーティストが人間的に横暴だという話を聞いて少しガッカリしたり、別の有名なアーティストの見た目の気持ち悪さの話に笑ったり、アーティスト達の愛人問題に興味津々だったり、ある大手のギャラリーがやっていたかなり酷いアートビジネスの話に唸ったり、いろいろ。ピーターが実際に出会った人たちの話だけれど、どのアーティストも有名すぎてほとんどワイドショーみたいだった。

4日目にデイヴィッドも少しだけロンドンからやってきた。私たちの仕事には彼もだいぶ満足したようで、デイヴィッドの喜んだ顔を見て私もほっとした。デイヴィッドは仕上げのコーティングを一緒にしたら、翌朝早くニースの美術館での打ち合わせに飛んでいってしまった。

5日目は午前中で全ての片付けと掃除を済ませ、挨拶を済ませる。家の主人達がナポリの思い出にとマリネッラ・ナポリのシルバーのアクセサリーをプレゼントしてくれた。ちなみにピーターは同じ店の腕時計を貰っていた。
それからアルフォンソのギャラリーを見に行った。思ったより小さくて、でも自然光が素晴らしい、なかなか良いギャラリーだった。それから時間もあるので観光でもと思っていたのだけれど、暑さと疲れで私はダウンしてしまいそのままホテルに戻って寝ていた。結局ナポリはほとんど見ていないけれど、それでもナポリは面白かった。

Add comment 2008年7月26日

ソル・ルウィット ウォールドローイング

 見つけた。これは2007年のプロジェクトで、ソル・ルウィット最後の段階の自由な線によるウォールドローイングの映像。ちなみにこのシリーズが始まったのが2006年のボローニャのギャラリーG7の展覧会(だとG7のオーナーが誇らしげに話していた)。昨年のビエンナーレもこの自由な線のウォールドローイングが展示された。長澤さんの作品の制作で一緒に仕事をした友達がソル・ルウィットのアシスタントをしていたのだけれど、ここでのインタビューと同じようなことを彼も話していた。とりあえず、実際はかなり辛い作業らしいけれど、その分喜びも大きいらしい。

1 comment 2008年6月8日

手を動かす

今日は朝からぐちゃぐちゃの部屋を整理し、隅から隅まで掃除した。これは制作に取り掛かる前の一つの儀式のようなものだ。制作を始めると1時間もしないうちにまたすぐに散らかるけれど、それでも作る前は掃除をする。

2週間ぶりの作業だったので、だいぶ手が鈍っている。毎日描いていたときの半分くらいのスピードに落ちて、ちょっとしたことで手間取り、一つの行程が終わるまでに倍以上の時間がかかる。あまりにその差が顕著なのでぞっとした。毎日やらないとこうも技術というのは落ちるものなのか。
ただ速ければいいというものではないが、乾燥の度合いは一刻一刻変わり、かつ天気の良い日は乾きも速いので、とろとろしていられない。さらに、最近では間違わなくなってきていた乾き具合とメディウムのくっつき具合の判断でも間違った。もしかしたらメディウムの分量が微妙に違ったのかもしれない。こういう小さな、それでいてとても重要なことを間違うのは、手の感覚が鈍っているせいだと思う。触覚と筋肉が鈍っている。

似たようなことはデイヴィッドのウォールドローイングでも痛感した。例えばアシスタントのピーターの動きは常に無駄がない。特にマスキングテープを円に貼っていくテクニックには感動した。速いのに丁寧できれい。細いマスキングテープは簡単で、教えてもらったら私もすぐできたが、正確にやろうとすると結構手間取る。それを太いマスキングテープでさっさと貼っていくピーターの技には思わず見とれてしまった。また壁が汚れないように新聞などを貼っていくテクニックもすごかった。誰にでもできることだが、ピーターのは職人技というのがぴったりだった。仕上げ段階ではピーターから掃除機のかけ方も習った。

また予定外の事態が起きたとき、アーティストがどんな判断を下すかということも興味深かった。そういう場合はいつもどうしてそのように判断をしたのかを質問した。きちんと理解しないと作業に差し障るのもあるけれど、むしろアーティストが何を基準に価値判断をするかを知りたかったからだ。大抵即答だが、時にデイヴィッドがすぐに決断しきれないときは、ピーターと相談して決める。後で聞いたのだが、ピーターが迷っているデイヴィッドを一押しして決断させることはよくあるらしい。

マスキングテープを貼ったり、絵を描かない壁を汚れないように紙で覆っていくといった下準備は一見なんでもないようでとても重要だ。下準備の正確さや厳密さが最終的な作品の質に大きく関わってくるからだ。これらは一度理解すれば結構簡単だったり、当たり前に思えるのだが、ちょっとしたコツを含めて準備段階を一つの方法論として確立するまでには何年もかかる。
例えば伝統的な油絵を描く人にとっては、絵の具を溶かす液や筆を洗う液や絵の具そのものは買えばよい。パレットも筆も、キャンバスも買える。当然各々が独自の使い方を持っているだろうが、基本的に絵を描くこと以外の部分で道具を発明したり、その使い方を発明する必要はない。しかし現代美術においては、この道具の発明と道具の使い方の発明はとても重要なファクターになる。これは自分で何年もかけて研究していくしかない。
この手の技術を仕上がった作品を見るだけで理解するのは難しい。美術館などで現物を見ても下準備の行程やコツはほとんど見えない。作った本人、アーティストに直接聞くしかないのだ。

準備段階を見て、コツを教えてもらって、さらに自分でやってみる。これが何よりも勉強になる。私はもう一人のデイヴィッド(イタリア語ではダヴィデ)から和紙の使い方を学んだ。彼が水で薄めたジェル・メディウムで紙を貼るという方法を伝授してくれた。彼はその方法で20年以上作品を作っているが、全く惜しまずに実際にやってみせてくれ、丁寧に教えてくれた。
デイヴィッド(トレムレットの方)にはパステルとマスキングテープを使った作品制作を薦められた。今回で少しパステルの性質が分かったので試してみるつもりだ。

私は芸術はあくまで頭でやるものだと思っているが、それでも手作業が必要なのもよく分かっている。そして手作業におけるちょっとしたコツやテクニックはいつの時代も師匠から弟子へと受け継がれていくものなのかもしれない。

Add comment 2008年5月28日

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